Q:どういった経緯で笠置に移住しよう!と思われたのですか?
A:暮らしをゼロから作りたくて。
秀紀さん:僕には浜松の佐久間の方で猟師をしている仲の良い親戚のおじさんがいて、山で
暮らしたいなあと昔から思っていました。
結婚や子どもが生まれたタイミングで、暮らしをゼロから作ってみたい!
と思うように。この家は不動産屋さんで見つけました。引っ越し後に我が家が神社の跡地と
知り驚きました。父が熱田神宮の氏子総代をしていたり、その実家は宮司家でしたので、こ
れもご縁なのかなと思っています。
名古屋では人材育成会社での仕事が主軸でしたが、グラフィックデザイナーや、大工仕事、
ライブハウスの運営など色々な仕事をしてきた経験もあったので、自分で改築をしてカフェ
とイベントスペースをしようという風に思ったんです。
この家はもともと福井県小浜市から前オーナーが移築してきた築170年の古民家です。
少しずつセルフリノベーションをして今のようになりました。
愛理:私は豊森なりわい塾という里山でフィールドワークをするNPO の事務局で働いてい
たのですが、普段は名古屋のビル街で働いていて、月一回の講座で里山へ行くという生活で
した。自然とともにという活動をしているのに、自分はビル街にいるということにギャップ
を感じいつかは自然の中で暮らしたいと思っていました。子どもが生まれたタイミングで名
古屋で子育てするイメージが持てず、ご縁もあり移住の運びとなったのです。
Q:子育てはどうですか?
A:お友達の家が遠いのにびっくり。のびのび走り回れる環境は貴重です。
愛理さん:私の子どもの時は公園に子どもだけで行って遊んだりということがありました
が、恵那北小はバス通学ですし、ここはお友達の家も遠くて、遊ぶのに車で送って行ったり
しなければならないのには驚きました。
秀紀さん:都会と違い、子どもがいくら騒いでも走ってもOK なのはとても良いですね。庭
や森で思う存分走っていますよ。地域の方とも、子どもを通じてつながることも多く、地域
にとっても子どもの存在はとても喜ばれていると感じて嬉しいです。
大変なのは、うちは核家族で自営業なので、特に土日の稼ぎ時に重なる地域や学校の予定時
には「どうしよう!」となること。移住者はほとん0ど核家族だと思うので、これは皆が直
面する問題だと思います。
Q: 10年の間に、カフェ経営、長女誕生、ゲストハウス開業といろいろありましたね。実際
の笠置での暮らしはいかがでしょうか。
A:田舎暮らしは忙しいんだなと。普段見慣れた景色をキープすることの大変さを実感して
います。
愛理さん:田舎暮らしというと、都会の人はみなゆったりしたスローライフで、野菜を育て
て保存食を作ったり、冬はゆっくり刺繍をしたりなんてことを思い描いていて、私もそうだ
ったんですけれど。
実際は夏は草を抑えるのに必死ですし、冬は雑木の整理や薪割り、樋を直したり、そうと思
えば確定申告などですごく忙しい。ふだん何の気なしに眺めているこの景色は、地域の方が
苦労して草刈りしたり木を伐ったりすることによってキープされているんだ~ということ
に、移住してから気付きました。
うちも畑があって、春には「やろう!」という気になって苗を植えるんですが夏はゲストハ
ウスなどが忙しいので草ぼうぼうになって、収穫までたどり着きません(笑)。もうちょっと
余裕を持ちたいですがお店をやりながら、子育てしながらだとなかなか大変ですね。
最初はカフェは週5でやっていたのですが、仕込みや家事も含めると全く休みがありませ
ん。カフェをやっているから、イベントをやっているからと子どもたちに我慢させてしまう
ことも多く、ジレンマを感じたことも多々あります。
秀紀さん:笠置山にはクライマーの方が多く来ますし、うちはイベントもやるので宿泊施設
があったらいいな~と前から思っていたのです。
ちょうど前オーナーが工房にしていた別棟の建物があったので、そちらをゲストハウスに改
築して、現在はカフェは土日のみをメインとして稼働を減らしています。長女が生まれると
きだったので、良いタイミングでゲストハウスづくりができました。
Q : 愛犬が迎えてくれますね。
A :オオカミ犬ピリカのおかげで、猪がさばけるように。
秀紀さん:友人のところにオオカミ犬の子が産まれたという情報があって、ピリカがうちに
やってきました。
ピリカはオオカミの血を引いているので、植物などは食べられず、どうしても肉が必要で
す。
それで猟師さんなどに余った猪や鹿の肉をくださいと声をかけさせていただいています。
近所の方が肉をくださることが多く、本当にありがたいです。ある日、朝に玄関を開けた
ら、どさっと猪が一頭転がっていました。地域の方が届けてくださったようなのですが、猪
の解体などしたことはもちろんなかったので、焦りましたね。YouTube を見ながらやっと
のことで解体し、無事にピリカの餌になりました。ピリカが結んでくれたご縁も多いです。
とっても大きいですが人懐っこくて可愛いですよ。
Q:素敵なクラフトがたくさんありますが、ご自身で作られたのですか?
A :もの作りは好きですね。
セルフビルドのパーゴラで草木染
秀紀さん:カフェやゲストハウスはほとんど僕が作りました。小屋とか、庭のパーゴラ(藤
棚のような日差し除け)とか、ポストとか、アート作品や民芸が混ざりあった手作りの空間
をこつこつ作ってきました。なんでも作りました。飾ってある絵も僕が描いたものがたくさ
んあります。いま作っているのは、前オーナーが作りかけにしていた丸太を使った削り出し
の椅子。僕が完成させようと思って、ゆっくりと作り進めています。
Q :自治会活動や学校の役員についてはいかがでしょうか。
A :一昨年は初めて自治会長も務めさせていただきました。自治会の皆さんにはとても良く
して頂いてます。
秀紀さん:僕自身は地域の行事などに参加するのは好きで、自治会の皆さんも良くして
頂いてますしありがたいです。覚悟していたよりもお祭りなどは少なめでした。コロナ禍だ
ったので普段の業務よりもだいぶ少なかったそうですが、それでも、何かやり忘れたことは
ないかな~とかヒヤヒヤしながらやりました。
愛理さん:学校の役員や保育園の役員などを合わせると、毎年何かしらの役を担っているこ
とになります。人数も少ないので、毎年やるもんだという気持ちで今はいます。だんだん慣
れてきました。
Q:これからやりたいことなどあれば教えてください!
A:秀紀:笠置のイワクラ講座はライフワークとしてこれからもやっていきたいと思ってい
ます。
【ペトログラフ市民講座座学風景】
数年前から小学校や公民館などで笠置山に点在するイワクラ(ペトログラフ)について講座
を開いています。
笠置山はとても貴重なメンヒルや歴史的価値のあるペトログラフが点在していて、世界的に
見てもすごいところです。日本イワクラ学会からも、日本有数のイワクラ地帯であると太鼓
判をいただきました。
【現地で説明ピラミッド岩にて】
町おこしにはよそもの・若もの・ばかものが必要と言いますが、よそもの視点で見ると笠置
山はすごい財産だと思っているので、それを少しでも伝えられたらなと。
小学生への講座も、将来彼らが大きくなったときにたったひとりでもいいから、「笠置山っ
てすごいんだな」って思ってくれる子がいたら万々歳という信念でやっています。
【笠置山山頂付近にて】
A:愛理さん:地域の人と一緒に、子どもとイベントをやりたいな。
子育て真っ最中でバタバタしている毎日なのですが、もっと地域の方と関わりたいな思って
います。そのなかでやりたいのが味噌づくりを皆でやったり、猪の解体体験とか、田んぼや
畑。ここでしかできないこと、子どもと一緒にできることを少しずつやっていきたいな。
保護者のお母さんたちがやっている「笠置女子会」にも参加していて、季節ごとにイベント
を企画しています。
この活動もみなさんに利用してもらえるといいなと。そしてカフェも地域の皆さんに開け覧
くださっております。
編集後記
笠置を愛する気持ちがひしひしと伝わってくるインタビューでした。
舩橋さんご夫妻は、笠置町移住定住委員会の委員としても活躍してからもご覧くださって
おりとても心強いです。
Comments